2020/10/31 SAT

ループウィラー代表・鈴木諭氏 × ディレクター南貴之 対談 <前編>

ディレクター南貴之が熱意で口説き実現した、世界に誇る日本発スウェットブランド、ループウィラーとのコラボレーション。人気のオーバーサイズのスウェット「LOOPWHEELER for Graphpaper」誕生までの裏話を前後編、全2回に渡ってひも解きます。前編はコラボまでの意外な!?道のり。

ーーLOOPWHEELER(ループウィラー)とGraphpaperのコラボレーションの経緯、お二人の出会いは?

鈴木諭(以下、鈴木):僕が南さんを最初に知ったきっかけは、南さんがまだ「CANNABIS(カンナビス)」にいた20年くらい前で、僕もちょうどループウィラーを始めたばかりの頃でした。雑誌『ビギン』現編集長の光木(拓也)さんから「鈴木さんに紹介したい面白い人がいる。カンナビスという店をやっていて、コラボをしたら面白いから」と聞いて、真面目に店を見に行ってみたら、骸骨とか飾ってあって、おっかないイメージだったので、「本当にコラボレーションして大丈夫かな?よくわかんないな」と不安に思ったのを覚えてます。だから、その後、僕からは光木さんに何も言わず黙っていて、結局そのまましばらく出会うことはなかったんです。

その後、南さんは「1LDK」を始められ、そのことを最初は知らずに「面白いお店ができたな」と思って店を見に行ったら、そこでまた南さんの名前が出てきて、「あの時の南さんかな」と感じたのが次の刷り込みです。知ってからリアルに出会うまでに、13、4年経っています。

南貴之(以下、南):その後、僕がGraphpaperのお店をオープンする前にループウィラーさんを扱わせていただけないかとご相談に行ったのが初対面です。そのとき、一番のベーシックなものは一切合切、卸さないし、やらないとおっしゃっていて、そこをなんとかお願いしますと。

「LOOPWHEELER千駄ヶ谷」東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-3 山名ビルB1F

鈴木:基本的に卸しは一切せず、ダブルネームという形を取っているので、無地のベーシックなものはループウィラーの3店舗と一部アマゾンでしか買えない。だから他のお店で無地のスウェットやパーカーがあるというのはありえないんです。今思うと、さすがですね。どこにも卸したことのないものを羽交い締めにされ、完全にボディプレスされた感じです(笑)。

南:記憶がないぐらい緊張していました。きっと門前払いだろうなと思っていたから。

鈴木:カンナビスから1LDKをやってたということしか知らず、南さんの人となりはまだわからなかったので。

ーーGraphpaperの他にも、さまざまなアーティストやブランドともコラボされていますが、立ち上げ当初、他社との取り組みはどのように行っていましたか?

鈴木:大手企業さんからもお話をいただくこともありますが、晩ご飯を一緒に食べる関係にならないとやらないというか、全く知らない人とはやらないというのがルールでした。誰かの友達で紹介を受けて、食事に行ったりして、ブランドのこと、デザイナーや代表の人となりをなんとなくわかるようになって、1年ぐらい経ってお互い理解してから、「なんかそろそろやる?」というのが、ループウィラーが始まった当初10年ぐらいのコラボレーションの流れだったんです。

だんだんループウィラーの認知度も上がってきて、コラボレーションする内容のクオリティも少しずつ上げていかなきゃいけない。最初は、うちのボディをキャンバスにデザイナーがグラフィックを置いて、プリントをするというのがメインで、大きくデザインやパターンに手を加えることはあまりなかったんです。ループウィラーのベースを理解した上で、プラスアルファとか、ひと捻りするとか、せいぜい色を別注するぐらいでした。

丸胴吊り編みクルースウェット「LW01」

ーーそんな中でどのようにGraphpaperとの取り組みは始まったのでしょう?

鈴木:ループウィラーを代表する、LW01という品番がありますが、これは初めて作った、僕らが考えるザ・スウェットなんです。南さんが、一番伝えたいものとして作っているLW01をきちんと評価してくれたのが、嬉しかったし、そこを突いてきたか、さすがだなと思いました。そこから入ってこられたので、羽交い締めにされたというのもあります。大事なところを押さえて、まずそれを見たいと、他でスウェットをやる気はさらさらないという熱い気持ちで来られたので。その時ようやく光木さんが僕と合うから紹介したいと言っていたのがわかって、この人となら付き合えるかなと感じました。僕の周りには、外見はそうでもないけど、実は芯があって、熱い考えを持った人が多く、今までもそういう人とコラボレーションをしてきました。

”LOOPWHEELER” for GP Raglan Sweat

ーー今では、ラグランスウェットシーリーズは、Graphpaperの人気の定番ですが、ラグランでやろうとなった背景は?

鈴木:スウェットのど真ん中というのは、両V(ネックの前後にV字のガゼットが配されていること)のセットイン、Vのないラグラン、前Vのフリーダムという通常ヴィンテージには外せない3パターンのヘリテージがあって、僕がループウィラーを始めたとき、どうしてもこの3型は作りたかったんです。ただ、いくら自分たちがやりたいと思っても、有名でもない、力もない、お客さんもいないから、似たような3型じゃ全然売れなくて。10メートル先からは同じにしか見えないけど、近づけばセットインだとわかるというマニアの世界なので、僕らで3型を維持するのが難しく、両VのセットインのLW01以外の、LW02のラグランとLW03のフリーダムは、たまに復刻することもあるけど、いまだにディスコン(製造中止)になる。

だから、ラグランというのは、ループウィラーでは滅多に見られないし、南さんの体型でも着られるようにするというお題もあったので、パターン的にはやりやすい。多分、当時はまだ今のようにビッグサイズが流行りというわけではなかったので、セットインで大きくしようとすると、肩線をすごく落とさざるを得ず、よくあるルーズフィットの形になって、デザインのスウェットになってしまう。なので、ラグランというチョイスは今思えば、正解ですよね。

南:そうですね。僕もべースにあるものを崩すと、ループウィラーが今までやってきたことまで崩してしまうと思ったんです。そこで僕が持っていた、90年代ぐらいの確かチャンピオンかどこかのデカいラグランスウェットで、Vガゼットもない、どシンプルなものを、震えながら鈴木さんにお見せしました。こんなのスウェットじゃないって言われるんじゃないかと思ってましたけど(笑)。

鈴木:ラグランはディスコンになってるし、デザインを変えずに南さんが着るサイズまで展開するという意味では理にかなってますよね。

南:僕も欲しいんだけど、セットインでは正直細くて着れないという話をして。一番覚えているのは、鈴木さんに「大きいスウェットやる意味ある?」って言われたことです。これから先、古着になるというのがコンセプトで、正統なスウェットを作ることがベースにあるからとご説明を受けて、「もちろんそうなんですけど、こういう大きいスウェットもありますよね」と生意気にも提案しました。そしたら、「じゃあラグランだったらあるし、今やってないからいいかも」と言っていただき、「そんなことをしてもらえるのか」と嬉しかった記憶があります。いまだに自分の中では、あのとき勇気を振り絞って言ってよかったと思っています。

僕みたいな大きい人でも細い人でもサイズの差をなくすというのもGraphpaperのコンセプトとしてあるので、そういう意味でもラグランは、着れる人の幅が広がりますから。

吊り裏毛

ーーコラボのスタート当時はフリーサイズでしたが、今はサイズ展開も増えていますね。

南:それは僕が個人的にもうちょっとビッグになっただけです(笑)。前のも十分大きいんですけど、僕がさらに大きくなってしまいましてと、頭を下げに行きました。そしたら「マジかよっ、痩せなよっ」て言われました(笑)。

ーーでは、ループウィラーのスウェットのパターンはどのように出来上がってるんですか?

鈴木:ループウィラーを始める前に、僕がOEMをやっていたとき、アパレル会社さんからいただいたパターンを工場に渡しても縫えないことが多かったんです。なぜかというと布帛は生地が安定してるので動かないんですけど、カットソーは素材によっては縦横、斜め全方向に動くので、同じスウェット一枚作るにしても同じ型紙、パターンは使えない。素材に合わせてパターンを変えないといけないんです。だから、できあがったファーストサンプルを、アパレルのパターン室に持っていくと、ベテランのチーフパタンナーが、目を吊り上げて、「ちょっと縮んでます。鈴木さん私のパターン通りに縫わなかったでしょう?」と言われ、冷や汗どころの話じゃなかった。OEMでは工場とアパレルの間に入ってその通訳をしなきゃいけなかったのが一番苦労しました。そういう経験を生かして、自分が独立する時には、何よりパタンナーが必要だということで、2人のパタンナーにお願いして3人でスタートしました。そのうちの1人とは今でも共に働いており、もう30年近く一緒にやっているので、あうんの呼吸です。

カタカナで「ループウィラー」と刺繍されたネーム

ーーそうやって生まれたループウィラーのパターンとは?

鈴木:うちのパターンは他のカットソーに比べて、カーブが入っていて特殊なんです。なかでもGraphpaperのは、前身と後身の前後差を微妙に付けていて、でも寸法だけで付けたらああはきれいにはならないので、お互いの微妙なカーブのバランスで作っているんです。カットソーのパターンを30年近くひき続けているので、手前味噌ですが、普通のパタンナーさんより優秀です。ただのスウェットだけど、着るとちょっと違う。素材の良さもありますが、パターンと縫製と全部が合わさって、ループウィラーのスウェットは着やすいねと言っていただけてるんだと思います。

南:いろんな要素が高いレベルで組み立てられてないと、いい服にはならないですからね。

鈴木:些細なことなんだけど、手を抜かずに。パターン数からしたら、6〜7個ぐらいしかないんですけど、だからこそ逆に難しい。

南:また、このフラットシーマという縫製もすごい上手ですよね。

フラットシーマ

鈴木:ヴィンテージのスウェットを掘っていくと、フラットシーマで縫製されたものが多い。なぜかというと、本当に縫製が上手なら、生地の断面と断面をピタッとつけた段階で縫っていけるんです。ただスピードは出ないので効率は悪いんですが、生地を無駄にはしない。

それと、4本の針で縫っていくので、強度もあるからほつれにくい。機能性という面では、評価の高い縫製方法です。ただ問題点は、旧式なところ。最新のも開発されてますが、1本の針で縫う力に比べて、4本の針で縫うにはより馬力が必要になります。そうすると大きなモーターをつけないとダメだし、ミシンから出る振動も大きいので、ある程度熟練してないと、ミシンに体が持ってかれたり、振動で手ぶれしてうまく縫えない。まっすぐ縫うのはまだ簡単ですが、カーブを縫うにはより熟練の技が必要です。

ループウィラーのスウェットを縫製する青森・丸和繊維工業の様子

それをやってくれてるのが、青森にある丸和繊維工業の工場の職人さん。と言っても、現場はほぼ全員女性なんです、おそらく男性は10人いないぐらい。ループウィラーを始める前からご一緒してるので、もう30年以上の付き合いになります。うちのスウェットは基本的に全部ここで縫っているというぐらい、メイド・イン・青森の縫製です。

僕らは、洋服を作って販売しているけど、裏で支えてくれる現場の人がいない限り、表現できないですから。ループウィラーはそういうコンセプトから始めているので、工場の方々と一緒になって成長していくというのがブランドの理念ですね。

”LOOPWHEELER” for GP Raglan Sweat NAVY SIZE 2

”LOOPWHEELER” for GP Sweat Parka BLACK SIZE 1

”LOOPWHEELER” for GP Sweat Parka

”LOOPWHEELER” for GP Full-Zip Parka NAVY SIZE 1

”LOOPWHEELER” for GP Full-Zip Parka

LOOPWHEELER 千駄ヶ谷店
〒151-0051
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-51-3 山名ビルB1F
TEL 03-5414-2350
http://www.loopwheeler.co.jp/

後編へつづく


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